ゲームジャーナリストの桐谷シンジです。 今回も多く寄せられてる質問にお答えしていきます。
この記事を読んでいる方は、18年ぶりに復活を遂げた「首都高バトル」の新作について、購入すべきか、特にがっかりするような点はないか気になっていると思います。 往年のファンであればあるほど、その期待と不安は大きいことでしょう。

この記事を読み終える頃には、あなたが抱える首都高バトル最新作への疑問や不安が解決しているはずです。
記事のポイント
- 最新レースゲームとは言い難い映像クオリティ
- リアルとは程遠いアーケード寄りの独特な挙動
- 多くのファンが望んだ機能の不足や実装見送り
- 操作性やUIに潜む細かなストレス要素

首都高バトルにがっかり?往年のファンが抱く第一印象と現実
待望の復活を果たした首都高バトル。 しかし、プロモーション動画や早期アクセスの情報に触れた往年のファンの中には、正直「コレジャナイ感」を抱いた方も少なくないのではないでしょうか。 ここでは、多くのプレイヤーが最初に直面するであろうグラフィック、挙動、そして舞台となる首都高の再現度について、忖度なく切り込んでいきます。

グラフィック|現代のレースゲームとしては物足りないクオリティ
まず最も多くの人が指摘するのがグラフィックの問題です。 2025年という時代にリリースされるレースゲームとして、正直なところ、そのクオリティは期待値を下回ると言わざるを得ません。
車両モデリングの甘さ
「グランツーリスモ」や「Forza Motorsport」シリーズのような、実車と見紛うほどのフォトリアルなグラフィックを期待していると、肩透かしを食らうことになります。 もちろん、過去作に比べれば飛躍的に向上していますが、現代のAAA級タイトルと比較すると、どうしても見劣りしてしまいます。
特に、ボディに映り込む周囲の景色の解像度の低さや、ヘッドライトの光の表現などは、数世代前のゲームのように感じられるかもしれません。 愛車を眺めて楽しむというレースゲームの醍醐味の一つが、このグラフィックによって少しスポイルされてしまっているのは残念なポイントです。
一般車両(トラフィックカー)の質
さらに没入感を削ぐ要因となっているのが、首都高を走る一般車両、いわゆる「トラフィックカー」のモデリングです。 プレイヤーが操作する車両に比べて明らかにポリゴン数が少なく、ディテールが簡略化されているため、背景から浮いて見えてしまいます。 これはゲームの軽量化を目的とした措置だと思われますが、リアルな首都高の雰囲気を期待していると、このローポリゴンな一般車が頻繁に視界に入ることがストレスに感じるかもしれません。 もう少しだけ、トラフィックカーの作り込みにもこだわってほしかった、というのが本音です。
車両の挙動|リアルシミュレーターとは異なる軽めの操作感
次に挙動についてです。 PR動画を見て「現実より挙動が軽めに感じる」と直感した方は、その感覚が正しいと言えるでしょう。 本作の挙動は、リアルなドライビングシミュレーターとは一線を画す、アーケードゲーム寄りの味付けになっています。
パッド操作の難しさとブレーキの問題
特にゲームパッドでプレイした場合、その挙動のピーキーさに戸惑うかもしれません。 少しステアリングを切っただけでも車体がクイックに反応するため、スムーズなライン取りが難しく、ピクピクとした動きになりがちです。 オプションでハンドリングの反応時間を調整することで多少は改善されますが、それでも繊細な操作が求められます。
そして、最も大きな問題点がブレーキの挙動です。 フルブレーキをしながらステアリングを切ると、ABSが作動しているにもかかわらず、極端に曲がらなくなってしまいます。 これにより、バトル中のギリギリのブレーキング競争でライバルに追突してしまったり、コーナーを曲がりきれずに壁に接触してしまったりといった場面が多発します。 「しっかり減速してから曲がる」という基本操作を徹底する必要があり、リアルなレースゲームのような「ブレーキを残しながらコーナーに進入する」といったテクニックは通用しにくい仕様です。 この点が、バトルの爽快感を若干損なっていると感じました。
首都高の再現度|作り込みは感じるものの平凡な印象
舞台となる首都高の再現度についても触れておきましょう。 レーザースキャン等で精密に再現された「アセットコルサ」の首都高MODなどを走り慣れているプレイヤーにとっては、本作の首都高は少し物足りなく感じるかもしれません。

リマスター版と捉えるべきコース設計
本作のコースは、近年の首都高を完全に新規で作り直したというよりは、過去作のデータをベースに現代風にアップデートした「リマスター版」といった趣が強いです。 例えば、現在では存在しないUターン可能なエリアがあったり、旧式のETCレーンが残っていたりと、往年のファンならニヤリとする一方、新規プレイヤーやリアリティを求める層からすると違和感を覚える部分も存在します。 街並みのテクスチャやオブジェクトの配置も、他の最新レースゲームと比較すると平凡な印象は否めず、没入感を高めるまでには至っていないのが現状です。 ただ、夜の首都高を流す雰囲気そのものは健在で、独特の空気感を味わえる点は評価したいところです。
車種ラインナップ|期待とは少し違った方向性
往年のファンが期待していたのは、やはり90年代から2000年代にかけて活躍した国産スポーツカーの充実でしょう。 もちろん、そうした人気車種も収録されていますが、一方で最新のSUVやコンパクトカー、セダンなども数多くラインナップされています。 これは、現代の自動車市場を反映した結果だと思われますが、「走り屋」の世界観を重視するファンからは「この車は首都高バトルにはそぐわない」といった声も聞かれます。 車種選定の多様性は歓迎すべきことですが、もう少しコアなファン層が喜ぶような、マニアックな旧車の追加などにも期待したいところです。
首都高バトルのここがダメ!システム・機能面の残念要素
グラフィックや挙動といった第一印象だけでなく、ゲームを深くプレイしていくと見えてくるシステム面や機能面の「ダメなところ」も存在します。 これらは今後のアップデートで改善される可能性もありますが、現時点での残念な要素として正直にレビューします。

車内視点・クラッチ操作の不在|没入感を損なう大きな欠点
本作をプレイして最も驚き、そしてがっかりしたのが「車内視点(コックピットビュー)」が存在しないことです。 レースゲームにおいて、運転席からの視点は没入感を高める上で最も重要な要素の一つです。
特に、本作は早期アクセスの段階からハンドルコントローラー(ハンコン)に対応しているにもかかわらず、肝心の車内視点がないというのは、正直に言って理解に苦しみます。 ボンネット視点や後方視点でハンコンを握っても、どこか物足りなさを感じてしまうのは私だけではないでしょう。 公式は将来的なVR対応も視野に入れていると発言しているだけに、なぜ車内視点が初期実装されなかったのか、疑問が残ります。
同様に、マニュアル車を運転する楽しみの核となる「クラッチ操作」にも対応していません。 ハンコンでHパターンシフターを使っていても、クラッチペダルはただの飾りになってしまいます。 この2つの要素の不在は、特にリアル志向の強いドライビングゲームファンにとって、購入を躊躇させる最大の要因と言っても過言ではありません。
ハンコン周りの不具合と仕様|最適化不足が目立つ
ハンコンへの対応自体は喜ばしいことですが、その実装にはいくつかの問題点が見られます。 まず、多くのユーザーからフォースフィードバック(FFB)が正常に機能していない、あるいは全く効かないという不具合が報告されています。 (これについては公式も不具合を認識しており、現在修正中とのことです)

また、異なるメーカーのハンコンとペダルを組み合わせて使用した場合に、アクセルやブレーキの認識が外れてしまうという問題も発生しています。 これは、一度ゲームを再起動するか、使用するデバイスを単一メーカーで統一することで回避できますが、やや不親切な仕様と言えるでしょう。 さらに、サイドブレーキ(ハンドブレーキ)がアナログ入力に対応しておらず、ONかOFFかのデジタル入力しか受け付けないため、微妙なコントロールができません。 ハンコンで本格的に楽しみたいユーザーにとっては、こうした最適化不足がストレスに繋がる可能性があります。
実装が見送られた機能|リプレイとオンラインランキング
レースゲームの楽しみの一つに、自分の走りを後から様々な角度で鑑賞できる「リプレイ機能」があります。 しかし、この機能は製品版のリリースには間に合わず、後日のアップデートで追加予定とアナウンスされました。 熱いバトルを繰り広げた後や、完璧なタイムアタックができた後に、その雄姿をじっくりと見返したいと思うのがプレイヤー心理でしょう。 この機能が発売当初から使えないのは、非常に残念な点です。
また、当初実装が検討されていた「Steamレコードランキング」は、チート対策が困難であるという理由で実装そのものが見送られることになりました。 オンライン対戦機能がない本作において、タイムアタックの記録を全国のプレイヤーと競い合うランキング機能は、大きなモチベーションになるはずでした。 その貴重なオンライン要素が一つ失われてしまったことは、長期的にゲームを遊び続ける上で大きな痛手と言えるでしょう。
オンライン要素の現状|マルチプレイは実装されるのか
そして、多くのファンが最も気にしているのが「オンラインマルチプレイ」の有無でしょう。 結論から言うと、現時点(早期アクセスおよび製品版リリース時点)で、オンラインマルチプレイに関する公式なアナウンスは一切ありません。 仲間と一緒に首都高をツーリングしたり、プレイヤー同士で熱いバトルを繰り広げたりといった遊び方は、残念ながらできません。
2025年のゲームとして、オンライン要素がストーリーモードしかないというのは、あまりにも時代錯誤と言わざるを得ません。 もちろん、今後の大型アップデートで追加される可能性はゼロではありませんが、少なくとも発売後すぐに友達と遊べるわけではない、という点は購入前に必ず理解しておく必要があります。
UI/UXの課題|ゲームの終了方法が分かりにくい
非常に細かい点ですが、地味にストレスが溜まるのがUI(ユーザーインターフェース)の分かりにくさです。 その最たる例が「ゲームの終了方法」です。 多くのPCゲームでは「Escape」キーを押せばメニューが表示され、そこからゲームを終了できます。 しかし、本作では「Tab」キーを押して「システム」メニューを呼び出し、そこから「ゲームを終了」を選択するという、少し直感的ではない手順を踏む必要があります。 これに気づかず、多くのプレイヤーが「Alt+F4」での強制終了を余儀なくされました。 他にも、メニューの階層構造が少し複雑であったりと、全体的に洗練されていない印象を受けます。
コンソール版の未定|PCゲーマー以外はプレイできない
最後に、プラットフォームの問題です。 本作は現在、PC(Steam)版のみのリリースとなっており、PlayStationやXboxといったコンソール版の発売は未定です。 かつて首都高バトルシリーズをコンソール機で楽しんでいたファンは非常に多く、PS5などでプレイしたいという要望は後を絶ちません。 PCのスペック要件自体は比較的低いものの、そもそもゲーミングPCを所有していないファンにとっては、本作をプレイするためのハードルは非常に高いと言えるでしょう。
それでも首都-高バトルは買うべきか?良い点と購入の判断基準
ここまで厳しい意見を中心に述べてきましたが、もちろん本作には光る部分も多く存在します。 では、これらの「ダメなところ」を理解した上で、本作は「買い」なのでしょうか。 ここでは、本作ならではの魅力と、購入すべきかどうかの判断基準を提示します。

首都高バトルならではの魅力|唯一無二の世界観
他のどんなレースゲームにも真似できない、本作最大の魅力。 それは、夜の首都高を流し、出会ったライバルにパッシングでバトルを挑むという、唯一無二の世界観とゲームシステムです。 獲物を探して高速道路を彷徨い、テールランプを見つけて近づいていく緊張感。 パッシングを送り、相手がハザードで応えた瞬間の高揚感。 そして、SP(スピリットポイント)を削り合う、独特のバトルシステム。 これらの要素が組み合わさって生まれる「首都高バトル」だけの体験は、18年の時を経ても色褪せていません。 この雰囲気が好きでたまらない、というファンにとって、グラフィックや挙動の問題は些細なことかもしれません。
カスタマイズの楽しさ|パーツメーカー追加で進化
愛車を自分好みにチューニングし、見た目をカスタマイズする楽しみも健在です。 製品版では、実在する国内のパーツメーカーが25ブランドも追加されることが決定しており、エアロパーツやホイール、その他のチューニングパーツの選択肢が大幅に広がります。 ステッカーやバイナルグラフィックを駆使して、自分だけのオリジナルマシンを作り上げる「リバリーエディタ」の機能も充実しており、カスタマイズ好きにはたまらない要素となっています。 バトルで稼いだクレジットを元手に、コツコツと愛車を育て上げていく過程は、本作の大きな醍醐味の一つです。
早期アクセスの価格設定|製品版よりお得に購入可能
価格面でのメリットも見逃せません。 製品版の発売に先駆けてリリースされている「早期アクセス版」は、製品版よりもかなり安価に設定されています。 そして、早期アクセス版を購入したユーザーは、追加料金なしでそのまま製品版にアップグレードされます。
早期アクセス版 | 製品版 | |
---|---|---|
価格(税込) | 3,960円 | 6,600円 |
差額 | 2,640円お得 |
この価格差は非常に大きく、もし購入を迷っているのであれば、製品版がリリースされる前に早期アクセス版を入手しておくのが最も賢い選択と言えるでしょう。
今後のアップデートへの期待|未完成ゆえの可能性
現在指摘されている問題点の多くは、本作がまだ「早期アクセス」という開発途上の段階であることに起因しています。 裏を返せば、これからのアップデートによって、不満点が解消されていく可能性を大いに秘めているということです。 公式もプレイヤーからのフィードバックを積極的に収集し、各種調整を行うと明言しています。 車内視点の実装や挙動の改善、オンラインマルチプレイの追加など、ファンの声が届けば、本作が「神ゲー」へと化ける可能性も残されています。 完成された製品ではなく、「一緒にゲームを育てていく」というスタンスで臨めるのであれば、この未完成さもまた一興かもしれません。
購入をおすすめする人・しない人
以上の点を踏まえ、本作の購入をおすすめする人と、そうでない人をまとめました。
<購入をおすすめする人>
- 何よりも「首都高バトル」という独特の雰囲気が好きな人
- フォトリアルなグラフィックやリアルな挙動にこだわらない人
- ライバルにパッシングを仕掛ける緊張感をまた味わいたい人
- 車のカスタマイズやセッティングをとことん楽しみたい人
- 今後のアップデートに期待し、気長に待つことができる人
- 少しでもお得な価格で購入したいと考えている人
<購入をおすすめしない人>
- グランツーリスモのような最新のグラフィックを期待している人
- アセットコルサのようなリアルな挙動を求めるシムレーサー
- 車内視点やクラッチ操作がないとレースゲームとして認められない人
- 購入してすぐに完成されたオンライン対戦を楽しみたい人
- 不具合や調整不足な点があるとストレスを感じてしまう人
- ゲーミングPCを所有しておらず、コンソール版を待っている人
まとめ
18年ぶりの復活作となった「首都高バトル」。 その長い沈黙は、ファンの期待を極限まで高めました。 しかし、いざ姿を現した新作は、その高すぎた期待に応えきれているとは言い難い、粗削りで発展途上な作品であったというのが、私の率直な感想です。 現代のレースゲームの基準で見れば、グラフィック、挙動、機能面で多くの「ダメなところ」が目につきます。
しかし、その一方で、本作にしかない唯一無二の魅力が、今もなお輝きを放っていることもまた事実です。 夜の首都高を舞台にしたライバルとの駆け引き、SPバトルという独創的なシステム、そして愛車を自分色に染め上げるカスタマイズの喜び。 これらは、他のどのゲームでも味わうことのできない、まさしく「首都高バトル」の魂そのものです。
もしあなたが購入を迷っているのなら、今回挙げた数々の「ダメなところ」を許容できるかどうか、自問自答してみてください。 最新のレースゲームとしての完成度を求めるならば、今は「待ち」が正解かもしれません。 しかし、「首都高バトル」でしか得られない体験に焦がれ、今後の成長を応援したいという熱い想いがあるのならば、今すぐこの世界に飛び込んでみる価値は十分にあるでしょう。 本作は、完璧な優等生ではありませんが、荒々しくも不思議な魅力を秘めた、愛すべき一作なのです。